井上真行

INOUE MASAYUKI

*

M

   

鮎川信夫のMとイニシャルは同じだなあと思いながら、
あいつの事を考えている、Mは俺の親友、あいつがなんで親友なのかも
親友という言葉をいちいち使うのかを考えて考えた、
大体の人は親友ではないし、そういう親友とか、思いより言葉が先行する単語を
あまり使うのは癪だ、でもMは親友。
高校からの腐れ縁で、偶然性によって年月が重なって、深くなっていったから親友、
という訳でもない、あいつがもう存在していないことによって、
親友という言葉を敢えて使いたがるのかもしれない、親友という言葉の強度によって、
あいつを深く深く思いたいのかもしれない、もしくは美化しているのかもしれない、
美化、いいじゃないか一生勘違いして美化し続けてやろうと思う。
そう、一生勘違いして美化し続ける、あいつぁ、過去を美化してるとんだ馬鹿だ
馬鹿で結構、あいつはそれでも優しい男だった、親友。
俺が昔、20歳の時かな、何かよくわからんことに巻き込まれて金が数万必要で
あの当時の俺たちにとっちゃあ、大金で親にもばれたくなくて、
Mよ!貸してくれって言ったら、あいつだけさらりと貸してくれた
その時言ったあいつの言葉を今も覚えてる
「まあ、世知辛い世の中やからな、返すんいつでもええで」って言って
貸してくれた、まあ金云々の話じゃなく、あいつはこんな世知辛い世の中だから、
俺ぐらいは世知辛い人間にならずに、お前に貸してやるという意味なんだ。
世知辛いから、くそ!こんちきしょう!俺ぐらい馬鹿になってやって、お前に貸すんだ!
っていう、あいつの人のよさ、それが俺は好きだった、優しかった。
あいつは、人がいいんだ、とんでもなく。
江戸っ子でもない、俺たち播州の人間の粋な気持ちを今でも忘れてない。
いやあ、ほんとにいろいろある、何か俺が精神的にボロボロになったとき、
銭湯に二人で行った帰りに、いつもなら気持ち悪いし、そういう空気じゃなかったら
そんなことされても気持ち悪いアホ!ぐらいだったんだけど、
あいつは、「お前はよくがんばっとる」といって、肩を組んでくれた。
うれしかった、男にされて、女にされるより、人生で初めて男にされてうれしかったかもしれない。
後にも先にも、男に肩組まれてうれしかった思い出など、それしかない。
後はあったとしても全部気持ち悪いし、記憶には残らない。
精神的にボコボコの俺をみて、自然に言葉が出て自然に腕を上げた
だけにすぎない、それが心地よかった、うれしかった、救われた気がした。
それが俺とあいつの相性の良さ、な気がする。

今でも、あいつは俺の親友でありつづける、ゴールデンウィークなので
ちょっとしか帰れないけど、おっちゃんに電話したらいつでも来てと
言ってくれた、おっちゃんの気持ちも分かる、何か感慨深かった
おっちゃんの気持ちを考えると、なんだかすごくいろんな思いがこみ上げてきた
何だかわっと、文字が出てきた、書きたくてしょうがなくなった。
こんなもん日記にしか書かれへんやんけ!フェイスブックなんぞには書かんぞ!
あいつの家に行ってくる。だからわっとなって思い出した、書くことで、思い続けることで
あいつのことを俺は忘れないようにと思う、2016.05.02

 - 日記

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